永えに咲く花を
 散らないで、散らないで

 *

 ──彼女が泣くところを初めて見た、と。死の間際で彼はようやく気づいた。
 止め処なく流れていく己の血液の気配を朧気に感じながらも、そんなことはどうでもいいとさえ思った。沸き上がってくるこの高揚感は何だろうか。酷く愛おしい。愛おしくて愛おしくて──その涙に濡れた顔をぐちゃぐちゃにして、跡形もないくらいに壊して、冷たい雪の柩に収めてしまいたかった。
 エミリオ、と彼女の声が動く。鈴よりも鳥よりも遥かに美しかったその音色は、彼の耳にはすでに遠かった。
 ぽつぽつと頬に落ちてくる、いくつもの雫が温かい。母の羊水のぬくもりとはこんなふうだったのだろうか。或いは、洗礼の際に沈められた清らかなる聖水とは、こんなふうに肌にじんわりと染み入って、たとえば畏敬や崇拝の念などと云うものを、この身に満たしていったのだろうか。
 けれどそれらの何一つ、きっと、こうまでも矛盾だらけな感情を抱かせることはなかっただろう。
 泣かないでほしいと叫ぶ心と、その表情が見たかったと悦ぶ心が拮抗して、彼の中で鬩ぎ合っていた。
「……ア、リア」
 凍えて血の気の失せた唇をどうにか動かし、彼は恋しい人の名を呼んだ。
 たった一言のその音だけで、世界は色濃く鮮やかに、美しく煌めき始めるのだと云うことを、ずっと前から──きっと産まれるその前から、知っていた。
 そして死んでも、ずっと彼女の名は特別な光であり続けるだろうと云う、確信がある。
「アリア……」
 朦朧とする意識の最中、彼は自らの血に塗れ、鉛のように重くなった腕を上げた。彼女の涙に触れたかった。
 誰もが宝石と讃えた瞳は、彼にとっては永遠に朽ちない花だった。神様に愛された、世界の何よりも尊く、綺麗で、揺るぎなく凛然と咲いた光の花。大切だった。愛していた。だから誰よりも──誰よりも、誰もに愛されてほしかった。
 孤独に怯えず。孤高に嘆かず。万人に寄り添って微笑んで、愛されていてほしかった。
 黄金(きん)の瞳からはらはらと絶えなくあふれる涙に触れる。彼はまた、アリア、と呼んだ。
「愛してる……」
 彼の血に染まった彼女の真っ赤な両手が、涙を拭った彼の手を捕らえ、柔らかくその頬に押しつける。彼女の頬は温かかった。それは彼女の肌が熱を帯びているからなのか、或いはもう己の手に血の廻りがないためなのか、彼には知る由もなかったが。
 それは幸福だった。餞別と称するにはあまりにも高潔すぎるほどの。
「愛してる。愛してる、アリア。だからどうか」
 幸福でいて。
 愛されていて。
 ──憎まれるために産まれてきたなんて、どうかそんなふうに、生きることを悲しまないで。
 エミリオ、エミリオ、と。聖域(サンクチュアリ)で鳴り響く神の鐘のように、いくどもいくども繰り返し、終わらずに降るあの花の国(ティタニア)の雪のように静かにその声は彼の上に降り注いで、いくえにもいくえにも織りを成し、決して彼に微笑みはしなかった神の御許の如くに彼を包んだ。
 やがて腕の力が抜け、彼の手は彼女の頬から離れた。

                 忘れられた王子/『The Last Eden』──『The Beautiful World』スピンオフ


 *

 恋情と愛情のはざまにて。
 『The Last Eden』最終章「10.十字架に捧げられし祈りが想うのは」(title by 群青三メートル手前 さま)より。『The Last Eden』はできれば今年中に完成させたい小説その三。
 黒王子も好きだが白王子もやっぱり好きだ。
 『The Beautiful World』はスピンオフたくさんやりたい。という願望だけはある。

 凛ちゃんと遊んできましたー! 楽しかったです!
 今日(昨日?)もなんか自分勝手&わがまま&好き勝手に話しっぱなしな感じで申し訳なかったよ;
 んでもいろいろお話できて楽しかったー。念願のカプリチョーザのパスタを食べられ、そしてカラオケで懐かしの合唱曲をいろいろ歌えて幸せだった!(……おまえミスチル三昧してくる予定ではなかったのか)
 また成人式で会おうな。がんばって探すよ(笑)。
 春休みもまた一緒にどこかへ逃避行お出かけしましょうね! >ぶらり途中下車は勘弁。

 いよいよ明後日(明日?)学校なんでちょこっと真面目に準備などなどしたいと思います。が。
 朝、起きられなかったら準備なんぞまるでなにひとつ意味がないので、がんばります……!(基本中の基本ができないだめ人間) ……でも八日の、仏語の授業のチーズフォンデュ作りは正直出たくな……(だから仏語の授業嫌いなんだよ! テキスト進めてよ!)
 出ないと、友だち二年生一人になっちまうからなあ。恨まれるよな、さすがに……
 ……アクティブ宣言すでに挫折しそうな感じですが? もしもし?

 時間を有効活用するすべを身につけたい。やりたいことは山のようにあるんだぜ。


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